文庫を潜入レポート

教室のなかでアメリカの鉄道を再現しようとしたのです。 若い先生はその自主的な発想に大喜びをして、「さあ、アメリカの鉄道だよ。
アメリカでは、このようにして列車が走っているのだ」と言って、列車の模型を走らせました。 そのため、その教室は、勉強をする場所というよりも、遊び場と化してしまいました。

結局、この授業によって生徒がアメリカについて学んだことは、単に「列車のおもちゃが走るのを見た」ということでしかなかったのです。 あまりのことに、この評論家の両親は、わが子をその学校に預けておくことが恐ろしくなり、あわてて別の中学校に転校させました。
きちんとした知識教育をしてくれるところを求めたのです。 この人は大人になってから評論家になることができましたが、あのまま遊ぶことを覚えていたならば、現在の地位はなかったかもしれません。
「子供の自主性を尊重する」という、美しい響きを持つ自由教育は、こうした怖さを持っています。 指導者がきちんとした目的意識を持たず、子供に振り回されてしまった場合、そこには、教室ではなく遊び場が展開してしまうのです。
子供の自主性を尊重し、子供が自主的に学習を進めていく形式を、アメリカは現在でも非常に重視しています。 ただし、アメリカで行なわれているやり方は、日本のやり方とはかなり違っています。
アメリカでは、教室のなかに豊富な学習材料を置き、子供たちが自由に取り出せるようにしてあります。 たとえば理科の教室であれば、日本の学校のように実験材料が奥にしまってあるのではなく、生徒が自由に取り出せるよう、教室のあちこちに、いろいろな種類の実験器具が置いてあるのです。
そこには明らかに、それらの器具を用意した人の意図があります。 子供の自主的な活動を促すために、その準備段階と1として、器具を豊富に用意しているのです。
また、何をすればよいのか分からない子供に対して、適切な方向に進めるように助言できるだけの専門知識を、アメリカの指導者は持っています。 しかも、その専門知識は、単に一つの結論を教えるというようなものではありません。
たとえ子供がいろいろな方面に疑問を持ったとしても、その疑問を正しいルートに乗せて追究していけるように、指導者は非常に幅広い教養を身につけているのです。


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